その後、みんなで海浜公園に出かけたが、御旗君に「クリスマスなんで二人きりで過ごしたいでしょう?」と切り出され、別行動となった。ダブルデートじゃなかったの?という疑問はありつつも、ユーリ君は大喜びだ。
2時間後に再び合流したが、御旗君はやはり寒すぎたのか私服に着替えていた。夕方に差し掛かっていたのと、センターの人たちが見張っていることもあり、帰ることを促そうとしたが、御旗君から思いもよらぬ提案をされた。
シュウ「この後、近くのホテルでディナーを予約してますので行きましょう。」
御旗君にとって、このディナーこそが本題なのだろう。でも、この誘いを受けるわけにはいかない。センターの人たちは、御旗君にかなり危機感を抱いている。今まで入れ替わりのために人を連れてきてはあらゆる手段を使い、ルカの情報を守ってきた。でも、御旗君にその手は通用しない。彼はAIなので、例え命を奪ったとしてもルカの情報を消すことはできないのだ。
キリカ「えっと・・・私たちもホテルでディナーの手配がされてて・・・。」
シュウ「ああ、無抵抗な僕を誘拐して閉じ込めたあのホテルですね。」
キリカ「うぅ・・・!!」
なんて意地悪な子なんだ・・・。
シュウ「でしたら、こっちの予約はキャンセルして、僕たちもそちらでいただきます。」
キリカ・ユーリ「ええっ!?」
逃げられない・・・。今日で片を付けたいってこと?
メル「もー!いいでしょ!キリカたちも困ってるじゃない!!」
キリカ「・・・・・・・・・。」
御旗君の目は、神永さんに止められながらも私から視線を外さなかった。直感が言っている。もう逃げられない・・・。
キリカ「どうしたら信じてもらえるの?」
シュウ「あなたたちが何を隠してるのかも気になりますが、お互いのことを考え、控えましょう。ですが具体的な方法(生体反応を隠蔽する方法)を示してもらわないと、その方法が有効かどうかも検討がつきません。」
キリカ「!!・・・それは、ハルキ君が話した通り・・・!!」
シュウ「話せないのであれば、以前頂戴したお話はお断りします。」
キリカ「!!?・・・。」
恐れていたシナリオが展開しはじめ、血の気が引いた。
シュウ「隠蔽工作に僕とメルの記憶を消しても無駄ですよ?何重にもバックアップしてますから。あなたたちの盗聴内容が抹消されることは99.9%ありません。」
キリカ「!!?・・・。」
ハルキ君・・・この子は脅しでどうにかなる相手じゃないよ。私たちに頼らなくたって、自分の力で未来を切り開く意志を持ってる。敵わない・・・!!唖然として言葉に詰まっていると、ユーリ君の手が触れた。
ユーリ「キリカさん。」
キリカ「!?・・・。」
ユーリ「僕には、彼の言ってることは全然分からないんですけど・・・メルさんと一緒にいたいという気持ちは伝わってきます!話してもいいと、僕は思います。」
キリカ「!!・・・ユーリ君。」
私は再び二人を見た。真剣な表情の御旗君と不安げに見守る神永さん・・・ユーリ君の言う通りかもしれない。私はルカのことばかり考えていたけど、この二人だって自分たちの『世界』を守るのに必死なんだ。