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お話を書いたり、絵を描いたりしています。ノベルアプリ『KIRIKA~同じ人間がいる、もう一つの世界~』をAndroidとiPhoneで配信中です!

【再掲載】星の区ルート続編小説をアップしました

アップ先のサービス閉鎖に伴い、読めなくなっていた星の区ルート続編小説を再アップしました!

この星の区ルート続編小説は表記通り、恋愛ノベルアプリ『KIRIKA~同じ人間がいる、もう一つの世界~』3rdシーズンで有料配信されている星の区ルートの続編小説でありますが、『メルトコンプレックス~相容れない二つの世界~』シュウルートの別視点版でもあります。有料版をすべて読まなくても2つのシリーズをどちらも読んでいれば何となく把握できると思いますが、星の区ルート及びシュウルートを読んでからのほうがかなり読みやすいと思います。

ボリュームは1時間ぐらいです。お時間があるときに読んでもらって懐かしい気分になってもらえたなら幸いです。

第一話はこちら

28 しあわせ

お父様に会うつもりでグラセウス邸に顔を出したが、航海日程が遅れているようで会えなかった。ルカの船は天候に左右されやすいため、こういうことがよくあるのだ。でも、フレイブリース行きの船は明日。せっかくリーネガイルへ来たのだからと初デートの時みたいに露店を回ろうかと提案したのだが、ユーリ君は頑なに首を振った。どうやらシュウ君たちが同行することになったせいで、不安を募らせたみたいだ。

ユーリ君は自分の部屋へ私を連れていくと、すぐに後ろから抱きしめた。

ユーリ「キリカ・・・キス以上のこと、して・・・。」

キリカ「!!・・・。まだ夕刻だよ・・・。」

ユーリ「!!・・・・・・・。」

彼は嫌だと言わんばかりに、きつく抱きしめた。こうなったら、もうかわせない。

キリカ「夕食の手伝いしたいから・・・ちょっとだけ・・・!?」

話している途中で、首筋を舐められビクッとなる。ユーリ君はすっかり私の敏感なとこを覚えてしまったみたいだ。

キリカ「んんっ!!」

ユーリ「ビクビクしてるキリカも好き・・・。」

キリカ「はあ、ダメだって・・・ばあ・・・!!」

足に力が入らず、座り込みそうになると、ユーリ君はそのまま抱きかかえてベッドまで連れて行った。ベッドに倒れ込むようにうつ伏せになっても、彼は執拗に首筋を攻めてきて、堪えきれずに掴んだシーツが一瞬でシワになる。

キリカ「んんっ!!ユーリ・・・ダメッ!!」

ユーリ「はぁ、キリカ・・・!!」

その後も、何度もダメッと叫んでいたが、ユーリ君に対して言ってないんだと気づく。・・・自分が怖いんだ。ユーリ君が本当のキス以上のことにたどり着く前に、自分の気持ちが抑えられなくなる気がして・・・。・・・・・。ユーリ君は本当に本当に・・・ズルいんだ。

ユーリ「!!?・・・。」

仰向けになって、彼のネクタイを引っ張って解いた。一瞬で、彼の顔が真っ赤になる。

キリカ「私が・・・いかがわしい人だったらどうする?」

ユーリ「・・・・・・・。」

もっと戸惑うかと思っていたが、彼は優しく笑っていた。そして、マントを外し、ベストを脱いでいく。シャツはさすがに躊躇いを見せたが、それも思い切って脱いでしまった。ユーリ君にとって、この一連の行動がどれだけ敷居の高いことか知っていたので、私まで恥ずかしくなる。

ユーリ「ジンさんみたいに筋肉ないですけど・・・それでも、キリカさんが好きって言ってくれるなら・・・!!」

キリカ「!!・・・。」

背を向けて自信なさそうに話すユーリ君を後ろから抱きしめた。

キリカ「ユーリ君の身体が一番好き。最高のプレゼントだよ。」

ルカでは誕生日のときにお世話になった人にプレゼントを贈ると言っていたので、かけて表現してみた。・・・が、すぐに恥ずかしくなる。身体が一番好きとか、最高のプレゼントとか・・・変態だよ!

ユーリ「・・・・。しっかり受け取ってくださいね!」

キリカ「うわあっ!」

形勢逆転で、またユーリ君に覆いかぶさられる。半裸を見慣れてないせいか、頭はフラフラ状態に陥っていたが、おかまいなしに彼はキスしてくる。

キリカ「!!・・・んんっ!ユーリ・・・!!」

ユーリ「!!・・・キリカさん、キリカさん・・・!!」

恥ずかしさが上回ったユーリ君はさんづけで繰り返し名前を呼んだ。その可愛さときたら、尋常ではなく愛しくて・・・幸せだなと思える瞬間だった。

ユーリ「キリカさん、大好きです・・・!!誰よりも幸せにします。だから・・・一生、僕の妻でいてください!」

キリカ「!?・・・ふふっ!」

不安そうに見つめる彼を私は思いっきり抱きしめた。ユーリ君、大好きだよ・・・これからもずっと!

 

 

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27 潔癖

1週間後。リーネガイルでお父様に挨拶をしてフレイブリースに戻ることになり、丘陵をジンとユーリ君と私で歩いていた。

ジン「まっ!近いうち巡礼で顔出すから、泊めてくれな!」

ユーリ「ええっ!?」

ユーリ君はあからさまに嫌な顔をしている。

ジン「なんなんだ!その顔は!家ぐらいいいだろ!」

ユーリ「!!・・・巡礼で来られるなら、人数も多いですよね?僕たちの家は小さいですし・・・。」

キリカ「小さいって言っても、リビングを使えば2,3人ぐらいなら・・・。屋根裏も一人ぐらいなら・・・。」

ユーリ「!!?・・・屋根裏部屋だけは絶対にダメです!!」

キリカ「!?・・・どうして?」

ユーリ「寝室に僕たち以外の人を入れるなんて・・・考えられないです!!」

ジン「潔癖すぎだろ!それでも護衛か!?」

ユーリ「巡礼は仕方ないでしょう!?それに・・・キリカさんの匂いを嗅いだら、おかしくなって襲いかかってくるかもしれません!」

キリカ「絶対ないから!」

ユーリ「!!・・・とにかく絶対にダメです!!ジンさんたちが一歩でも立ち入ったら、シーツを・・・いえ、ベッドごと買い替えます!!」

ジン「!!・・・めちゃくちゃだな、おい!」

ジンは呆れて、大きなため息をついた。私は恥ずかしくて俯いた。

ユーリ「火の精霊への巡礼は、ジンさんとカナメさんで来られるんですか?」

ジン「いや、違う。俺と・・・。」

ジンが話そうとすると、向かいからやってくる人たちが声を上げた。

???「ジンさーーーん!!ただいま戻りました!!」

ジン「おおっ!シュウ、戻ったか!」

小柄で可愛い顔をした男の子が手を振っていた。見間違えようがない。マイラス新しい精霊使いシュウ君と、バルでネバーランドの開発をしているシュウ君は『同じ人間』だったのだ。私とユーリ君は思わず顔を見合わせた。

シュウ「ジンさん、こちらは?」

ジン「ああ!お前らまだ会ったことなかったのか!・・・ずっと会いたがってたキリカちゃんとその夫のユーリだよ。」

シュウ「!!?・・・この方が!!」

キリカ「うわあっ!!」

シュウ君は興奮気味に私の手を掴んだ。

シュウ「初めまして!シュウと申します!!ずっとお会いしたいと思っておりました!!」

キリカ「!?・・・あ、ありがとう。」

ユーリ「!!・・・気安く触らないでください!!」

ユーリ君は、シュウ君の手首を大人げなく叩き、離れさせた。シュウ君は驚きながらも、気負いすることなく続けて話す。

シュウ「今からリーネガイルですか!?夕刻にはマイラスに戻られるんですか!?」

ジン「いや、リーネガイルでユーリの親父に会った後、フレイブリースに戻る予定だ。間が悪かったな!」

シュウ「えええっ!?」

シュウ君はガクッと肩を落としたが、数秒後また勢いよく顔を上げた。

シュウ「いえ!最高の間ですよ!僕たちもキリカ様に合わせてフレイブリースに渡りましょう。」

ジン「!?・・・どいつもこいつもめちゃくちゃなこと言いやがって・・・。巡礼は思っている以上に負担が大きい。休むのも仕事のうちだぞ!」

シュウ「船で十分休めますし、フレイブリースは巡礼道が整備されてますし、現地でこまめに休む時間をとって移動した方が楽で負担も軽減できるかと・・・。」

ジン「金はどうするんだ、金は!宿に泊まるのもタダじゃないんだぞ!」

シュウ「お二方のご自宅に泊めていただければ、かかりませんよね!」

ジン「!?・・・なるほど、その手があったか!」

ユーリ「僕は絶対に反対ですからね!!」

シュウ「キリカ様、僕は早くあなた様に追いつきたいと思っております。ですが、マイラスはまだまだ財政の厳しい街・・・どうか、故郷の街の精霊使いに慈悲の心を・・・。」

彼はそう言いながら、まるで大精霊に祈るかの如く、手を合わせ拝んだ。私はびっくりして、彼の肩をつかんだ。

キリカ「ちょっと・・・!!そんなことしなくても、お金取る気ないから!!」

シュウ「!?・・・本当ですか!?」

ユーリ「キリカさん!!手っ!!」

ユーリ君は我慢の限界に達してしまったようで、私の手を引っ張り先を歩いた。その後、ジンはシュウ君と話をつけて、私たちの出発に合わせてフレイブリースに渡ることになったそうだ。はあ・・・ジンやシュウ君と一緒なのは楽しいし、喜ばしいことなんだけど、ユーリ君はずっと不機嫌になるんだろうなあ・・・。

 

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26 使命

おばあちゃんの葬儀は、街を上げて行われた。次のマイラスの長には、カナメさんが就任するという。精霊使いと兼任になるが、エレナさんも手厚くサポートするので問題ないらしい。

昼過ぎ。やるべきことが一通り終わり、自室に戻った。ユーリ君は多忙のエレナさんに代わって、買い出しに行っていて、ノノカも近くにいなかった。・・・・・・・。一人になると、頭の中は後悔でいっぱいになる。マイラスへ帰ってきたあの日、もっとおばあちゃんと話せばよかったなあって・・・。一人にしてほしいって言ったのも、私に気を使ってのことだったんだろう。おばあちゃんは厳しかったけど、優しかった。・・・・・・。涙がこぼれる。ああ・・・もう、おばあちゃんと話せないんだ・・・。

緑の小精霊「キリカ。」

キリカ「!?・・・。」

突然、緑の小精霊に話しかけられ、涙を拭いた。

キリカ「ん?どうしたの?」

緑の小精霊「トキ様から伝言預かってるのね!」

キリカ「えっ!?」

おばあちゃんは精霊使いじゃないのに、どうやって・・・。・・・・・。あっ!私と話した後、一人になりたいと言ったあの時だ。あの時、おばあちゃんは珍しく小精霊の存在を気にしていた。

緑の小精霊「『あなたが戻ってくる頃にはもう私は霊魂に還っていることでしょう。キリカ・・・会いに来てくれてありがとう。彼と末永く幸せに生きなさい。これは、私からの使命です。』」

おばあちゃんらしい素っ気ない文章だが、言葉の1つ1つに愛情を感じた。おばあちゃんは私が帰ってきた理由も、自分の死が近いことも分かっていたんだ。そして、使命という言い方をすることで、私に自分の幸せも、精霊からの使命と同等と考えなさいという優しさが込められていた。おばあちゃん・・・!!気が付くと、涙は溢れ、声を出して泣いていた。

キリカ「うわああああぁぁぁ・・・!!」

 

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25 悲報

数日後。年明けにルカへ戻るつもりだったが、もう一人の私から都合がいいタイミングで入れ替わりたいと申し出があった。私たちは、メルとシュウ君の一件で、できるだけ早く戻った方がいいと思っていた節もあり、快諾した。

ルカに戻ると、故郷に帰ってきたような気持ちになる。いつの間にかバルよりもルカが居心地のいい世界になっていたんだ。占術の間にはおばあちゃんかエレナさんがいるのだが、今日はなぜかジンがいた。もしかしたら、おばあちゃんの具合が悪くなったのかも・・・!!私は急いで水晶から出た。

キリカ「ジンただいま!おばあちゃんは!?」

ジン「!?・・・。今日に限っては随分察しがいいんだな、キリカちゃん。」

えっ・・・。

ユーリ「!?・・・どういう意味ですか?」

ジン「・・・・・・・・。昨日、トキ様が永眠された。」

キリカ・ユーリ「!!!?・・・。」

頭が真っ白になって、何も言葉が出なくなる。おばあちゃんが・・・亡くなった・・・?

ユーリ「・・・・・・・。入れ替わりが間に合ってよかったです。」

ジン「そうだな。もう一人のキリカちゃんもお前らには感謝してたぞ。」

ユーリ「もう一人のキリカさんは葬儀に出席しなくていいんですか?」

ジン「今、マイラスの精霊使いはキリカちゃんだし、彼女にも見送ってもらいたいってさ。」

ユーリ「それで、急がれて・・・。」

俯いている私の手をユーリ君が掴んだ。

ユーリ「キリカさん、一緒にトキ様をお見送りに行きましょう。」

キリカ「!?・・・。うん・・・。」

ユーリ君に手を引かれ、そのままついていったが、私の思考は止まったままだった。

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24 吐息

ユーリ君と甘い時間を過ごし、そろそろお風呂に入ろうかという流れになる。私はユーリ君に脱がされたセーターを着ながら、小さく返事した。もっと先だと思っていたが、ユーリ君が『本当のキス以上のこと』にたどり着く日も近いのかもしれない。・・・・・・。どうしよう。受け入れられる自信があると思っていたけど、いざ目の前まで差し掛かってると思うと不安だ。

ユーリ「じゃあ、入ってくるね!」

キリカ「うん。」

ユーリ君はニコッと笑って、部屋の扉に手をかけるが、ビクッとする。

キリカ「どうしたの?」

ユーリ「!?・・・い、いえ、僕の勘違いだと・・・。」

キリカ「??・・・。」

そう言って、ユーリ君は扉を慎重に開け、リビングの様子を窺うように覗く。・・・が、すぐに扉を閉め、私の方を向く。その表情は羞恥に満ちている。

ユーリ「キリカさん、大変です・・・。メルさんとシュウ君がその・・・キス以上のことしてて、リビングに戻れそうにありません!」

キリカ「ええっ!?」

ま、まさか・・・!二人は私たちが外出してると思ってるだろうし、いつ帰ってくるかも分からない状況で・・・うん、あり得ない!

キリカ「暗くて見間違えたんじゃないの?」

ユーリ「!!・・・。そんなこと言うなら、キリカさんが自分の目で確かめたらいいじゃないですか!!」

キリカ「!?・・・。」

そう言われては後には引けず、私はゆっくり部屋の扉を開けた。開けた瞬間、二人の喘ぎ声ともとれる熱い吐息が耳に入る。

メル「シュウ・・・!!んんっ・・・。」

シュウ「はぁ、可愛い・・・我慢できないんだ?」

メル「!!・・・ち、違っ・・・!?んんっ!」

シュウ「ふふっ!素直じゃないんだから!」

キリカ「・・・・・・・・・。」

声だけで分かる。これは完全に『キス以上のこと』をしてる。メル、大胆なところあるんだなあ・・・リビングでするなんて・・・。それとも、シュウ君に迫られて断り切れなかっただけ?

ユーリ「見ました?」

キリカ「!?・・・。う、うん・・・。」

見てないけど、見たってことにしておこう。

ユーリ「・・・・・・・・・。キリカさん、すみません・・・。」

キリカ「えっ!?」

な、なにが?

ユーリ「僕、女性の気持ちが分かってませんでした。だから、ジンさんは気づいて、忠告してくれたんですね。」

キリカ「!!・・・。」

これのこととは違うと思うけど・・・。

ユーリ「キリカさんは僕がするの、ずっと待っててくれたんですよね!?」

キリカ「!?・・・そんなことないよ。焦る必要は・・・!!」

ユーリ「いいえ!焦らせてください!僕は16歳になったんですよ!?彼にできて、僕にできないことはありません!!」

キリカ「うわっ!!」

押されるようにしてベッドに座ると、彼は私の着ているセーターの裾を掴む。

ユーリ「・・・もう一回脱がせてもいいですか?」

キリカ「!?・・・。」

もはや、頷くしかできず、脱がせられた後は中に着ていたシャツのボタンを外し始める。本気でするつもりなのかな・・・怖くて目をつむっていると、首元にキスの感触を覚えた。

キリカ「んっ!?」

ユーリ「!?・・・。キリカ・・・!!」

びっくりして声が出たのを私が喜んでると思ったユーリ君はどんどんキスを落としていく。恥ずかしくてよく見てなかったが、ユーリ君が真似してると考えると、メルとシュウ君は首にキスし合ってただけみたいだ。だとしたら、さすがに大げさじゃないかな?首だけであんな声を出・・・!!?

キリカ「んんっ・・・!!」

不意にユーリ君に首筋を舐められ、声が出た。いきなり舐めるとか反則だよ・・・!!

ユーリ「キリカさん・・・好き・・・大好きです!!」

キリカ「!!・・・ユーリ・・・!!」

お返しをするように、ユーリ君の首にキスした。

ユーリ「あっ!」

キリカ「!?・・・。」

彼はびっくりして身体をのけぞらせていたが、体勢を戻すと自らシャツの上部のボタンを外す。

ユーリ「この方が・・・しやすい・・・ですよね?」

キリカ「!?・・・。」

うんと返事する代わりに、ユーリ君の首にキスした。ユーリ君は気持ちよさそうな声を上げながら、負けずと同じ場所にキスを返してくる。こんなキスで満足しちゃうなんて、私もまだまだ子供なのかも。でも、それでいいんだ。二人で少しずつ大人になっていこうね、ユーリ君。

 

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23 独占欲

クリスマスパーティーを終え、部屋に戻ったが、ユーリ君は終始ご機嫌だった。すっかりバルの誕生日を気に入ったみたいだ。

キリカ「最高の誕生日になったね!」

ユーリ「うん!・・・でも、誕生日はこれから!」

キリカ「えっ!?」

彼は手を引いて、ベッドルームまで連れていく。そして、部屋の扉を閉めると同時にキスした。

キリカ「!?・・・。」

ユーリ「はぁ・・・やっと二人きりになれた・・・。」

キリカ「!!・・・。」

あんなに豪勢に祝ってもらっても、ユーリ君が本当に祝ってもらいたかった相手は私で・・・。可愛い・・・。自然と手が伸びて、彼の唇を引き寄せる。

ユーリ「!?・・・んはっ!はぁ・・・。」

キリカ「!!・・・。」

ユーリ君の声に高まる気持ちが抑えられなくなっていく。メルとシュウ君が戻ってくるまでならいいかな・・・?

ユーリ「キリカ・・・!!」

彼に強く抱きしめられると同時に、遠くでドアの音がした。メルとシュウ君が帰って来たんだ・・・!!なんてタイミング悪いんだろう・・・。しかし、ユーリ君は抱きしめる手を緩めようとはしなかった。絶対、聞こえてるよね!?

キリカ「ユーリ・・・後にしよう?メルたち、間違えてこっちの部屋に来ちゃうかもしれないし・・・。」

ユーリ「!!・・・。後ってどのくらい?」

キリカ「うーん・・・。」

ユーリ「キリカは優しいから、メルさんたちを放っておけないんだろうけど・・・でも、今日は僕の誕生日・・・バルでは僕が生まれてきたことをお祝いする日なんだって、教えてくれたよね!?なのに・・・今日のキリカはメルさんたちのことばっかり!!ワタリさんとハルキさんの指示は終わったんだから、もっと一緒にいたいと思ってくれてもいいでしょ!?」

キリカ「!!・・・。」

不安が溢れかえったように一気に言われ、たじろぐ。ユーリ君にメルとシュウ君がいるからやめようと言っても通じない・・・自分の誕生日を特別な日にしたい気持ちが強いのだ。

キリカ「一緒にいたいとは思ってるよ。でも、今日は・・・!!」

ユーリ「嫌だ!!」

キリカ「!!?・・・。」

ユーリ君は私を抱きかかえたまま、ベッドに押し倒した。勢いで、ポケットに入れていた携帯端末が絨毯の上に落ちる。

ユーリ「今日は我が儘なんでも聞いてくれるって約束したよね?」

キリカ「!!・・・。」

我が儘をなんでも聞くと言った覚えはないのだが・・・彼の目はいつになくキラキラしていた。私は、こうなってしまったユーリ君に弱い。ズルいと分かってても、甘やかさずにはいられないんだ。

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22 サプライズ

今晩、私たちの使っている部屋に泊まっていくことになった神永さんと御旗君は二人でディナーへ出かけ、私たちはハルキ君の部屋で行われたクリスマスパーティーに参加した。ユーリ君は「僕たちも二人きりでどこか行きましょうよ!」と駄々をこねだしたが、断った。ルカの自宅へ帰れば、二人きりの時間は飽きるほどある。今はバルにいるときにしか会えない人たちとの貴重な時間を楽しみたいのだ。

ハルキ「いつまでムスッとしてるんだよ。」

ユーリ「!!・・・してませんよ!」

ハルキ「君の独占欲の強さは相変わらずだね。キリカが浮気をするような女だと思ってるの?」

ユーリ「!!?・・・思ってませんよ!!でも、キリカさんに変な男が寄ってきたら困るじゃないですか!?」

ハルキ「変な男ね~・・・心外だな。」

ユーリ「!!・・・。」

料理を取り分けながら、聞き耳を立てて二人の会話を聞いていた。ユーリ君は少しずつハルキ君を信頼しはじめているが、やはり過去が過去なだけにすべてを信じているわけではないようだ。うーん、無理なんだろうなあ・・・私がハルキ君を好きだった過去を消せない限り。

ハルキ「まっ、変な男もたまにはいいってところを見せてあげるよ。」

そう言って、彼が指を軽快に鳴らすと部屋の照明が落ちた。この場にいる人はみんな何かのサプライズを暗黙の了解のように見守っていたが、ユーリ君だけは何が何だか分からず私の方へ駆け寄ってきて抱きしめた。

ユーリ「何が何でも僕がお守りします!!」

キリカ「えっ!?」

そうこうしているうちに、部屋の外から火の灯ったケーキがワゴンに揺られ、運ばれてくる。ハルキ君、まさか・・・!!

ハルキ「ユーリ、16歳の誕生日おめでとう!」

ユーリ「!!?・・・。」

ハルキ「びっくりした?バルでは生まれた人をお祝いする日なんだよ。」

ユーリ「!!・・・。」

ユーリ君はどうしていいか分からなかったのか、私の顔を見た。

キリカ「年の数分ささったロウソクの火を一気に吹き消すのがバル流のお祝いだよ。」

ユーリ「・・・・・・・。」

ユーリ君は抱きしめていた私の身体をゆっくり放し、キラキラした目でケーキを眺めた後、一気に吹き消した。同時に部屋の照明が戻り、みんなが拍手する。

スニケット「げっ!もう16歳かよ!見えねーな!」

ワタリ「おめでとう!これで晴れて、婚姻届が出せるね。」

ユーリ「ありがとうございます!はい!!・・・ルカに戻ったらすぐにでも!!」

そう言いながら、手を掴まれ照れる。もう・・・。

ハルキ「変な男たちとの付き合いも悪くないでしょ?」

ユーリ「はい!!・・・キリカさんは渡しませんけど!」

ハルキ「!?・・・。はいはい。」

私とハルキ君は顔を見合わせて笑った。16歳になっても、何歳になっても、ユーリ君はユーリ君なんだろう。でも、それでいい。それがいい。私は独占欲が強くて、甘えん坊で、やきもち焼きなユーリ君が好きなだから・・・。

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21 信用

話し合いが終わったようで、ハルキ君の部屋へ再度行くとみんなホッとしたような顔つきだった。どうやら御旗君からいい回答をもらえたみたいだ。

ハルキ「こういう結果になるんだったら、最初から話せばよかったね。」

キリカ「!?・・・。話し合いは上手くいったんだね!?」

ハルキ「うん。守秘はもちろん、全面的に協力すると言ってくれた。」

スニケット「嘘じゃないといいけどな。」

ハルキ「嘘じゃないよ。ね、キリカ?」

キリカ「えっ!?」

なんで私に訊くの!?

ハルキ「キリカが信用できるって言えば、俺はなんだって信じるよ。」

キリカ「!!?・・・。」

ハルキ君に嬉しいことを言われ、顔が火照る。

キリカ「え、えっと・・・!!」

なんて言っていいか困っているとユーリ君が怒り始めた。

ユーリ「ぼ、僕だって、キリカさんが信用できるって言えば、何でも信じられますからね!!」

キリカ「・・・・・・・。はあ・・・。」

もう、なに張り合ってるんだか・・・。ユーリ君の可愛い見栄にみんなで一斉に笑った。よかった・・・これでルカもバルも今まで通りでいいんだね。

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20 お手上げ

ハルキ君の部屋には、ハルキ君とスニケット、そしてワタリさんがいた。

ハルキ「君にはお手上げだよ。」

シュウ「お褒めの言葉をいただき光栄です!」

ハルキ「・・・・・。」

御旗君はこの場に来ても相変わらずの余裕っぷりだ。怖くないのかな?私が初めて銀河研究センターに行った時はビクビクしっぱなしだったのに・・・。

ハルキ「彼女には悪いけど、遠慮してもらってもいいかな?」

メル「!?・・・。」

シュウ「はい。むしろ、そうしていただいたほうが助かります。」

御旗君は心配そうな表情を浮かべる神永さんの腕に手を添え、目を見て頷いた。私とユーリ君も「大丈夫」と声をかけながら、神永さんを自分たちの部屋へ案内した。

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