部屋に戻ると警報音は鳴っていなかった。
スニケット「ハルキの部屋とこの部屋は盗聴器を感知して、知らせるようになってるんだ。」
キリカ「!!?・・・。じゃあ、スニケットがさっきユーリ君のイヤリングから外していたのは・・・!!」
スニケット「盗聴器だ。」
キリカ「!!・・・。」
・・・だとすると、盗聴器をつけられたタイミングはあの時しかない。メルちゃんと一緒にいた男の子にイヤリングを見せた、あのタイミング・・・。でも、なんで・・・!!
スニケット「心当たりがあるみたいだな。」
キリカ「!?・・・。うん。・・・実は、もう一人の私の知り合いに会っちゃって、適当に話を合わせたの。・・・で、その子と一緒にいた男の子がユーリ君のイヤリングに興味を持ってて、見せてほしいって言ってきたの。つけられたとしたら、その時しか・・・。」
スニケット「ガキ!?」
キリカ「うん・・・小学校高学年ぐらいだったかな?」
スニケット「マジか・・・。いや、知り合いを名乗る女がやらせた可能性もあるか。」
ユーリ「!?・・・。あの、僕、何かいけないことを・・・。」
スニケット「・・・・・・。ハルキには俺から報告する。今日の外出は控えてくれ。」
キリカ「う、うん!もちろん!」
スニケットはユーリ君に説明するのが煩わしかったのか、無視して部屋を出た。私は落ち込んでいるユーリ君を慰めるように、背中に手を当てた。
ユーリ「!?・・・。やっぱり、僕、何かしてしまったんですね・・・。」
キリカ「・・・・・・。誰でも、気づけなかったと思うから・・・。」
ユーリ「!!・・・本当のことを言ってください!僕、何をしてしまったんですか!?」
キリカ「!!?・・・。」
私は、彼の手を握り、分かりやすく盗聴されていたことを説明した。
ユーリ「バルは、そんなことまでできるんですね・・・。迂闊でした・・・。」
キリカ「うん・・・私も・・・。まさかあんな小さな子が盗聴器を仕掛けてくるなんて・・・。」
小さい子じゃなくても、気づかなかっただろう・・・。まさか自分たちに盗聴器をしかけようとする人間がいるなんて、夢にも思ってなかったのだから・・・。
ユーリ「僕たちが異世界から来た人間だと分かっての盗聴・・・なんでしょうか?一体、何が目的で・・・。」
キリカ「うーん・・・。」
神永さんはどう見ても、私と同い年ぐらいの女の子だ。不自然そうな素振りはなかったし、演技しているようには思えなかった。・・・となると、あの男の子の単独行動?どちらにしても、盗聴の意図は分からない・・・。
ユーリ「もしかすると・・・。」
キリカ「ん?」
ユーリ「あの子、キリカに気があったのかも!!」
キリカ「ええっ!?」
絶対ないでしょ!
ユーリ「メルさんと恋人と見せかけて・・・実は密かにキリカに好意を寄せていた。でも、キリカには僕という夫がいる!なんとかして別れさせたいと思ったあの子は、僕に盗聴器を仕掛け、別れさせるための材料を探して・・・!!」
キリカ「あり得ないから!!」
ユーリ君の想像力・・・いや、被害妄想力には恐れ入る。異性を見つけると、すぐ恋敵に結び付けるんだから・・・。でも、まあ・・・そうやって言ってもらえると好かれてるんだと思えて、嬉しい気持ちもあるんだけど・・・。
キリカ「もう・・・真面目に考えてよね!」
ユーリ「考えてるよ!・・・・・・。あっ!そうだ!僕のイヤリングにつけられていた盗聴器は今どこ!?」
キリカ「スニケットが持ってちゃったよ。・・・で、どうするつもり?」
ユーリ「もう一回、イヤリングにつけるんだよ!」
キリカ「ええっ!?」
ユーリ「それで、キリカがいかに僕を好きかを話すんだ。そしたら、あの子もキリカをあきらめるしかないよ!!」
キリカ「・・・・・・・・・。」
呆れて開いた口が塞がらない。ユーリ君にとって『盗聴犯の片想い説』は冗談ではないのだ。