13 心当たり

部屋に戻ると警報音は鳴っていなかった。

スニケット「ハルキの部屋とこの部屋は盗聴器を感知して、知らせるようになってるんだ。」

キリカ「!!?・・・。じゃあ、スニケットがさっきユーリ君のイヤリングから外していたのは・・・!!」

スニケット「盗聴器だ。」

キリカ「!!・・・。」

・・・だとすると、盗聴器をつけられたタイミングはあの時しかない。メルちゃんと一緒にいた男の子にイヤリングを見せた、あのタイミング・・・。でも、なんで・・・!!

スニケット「心当たりがあるみたいだな。」

キリカ「!?・・・。うん。・・・実は、もう一人の私の知り合いに会っちゃって、適当に話を合わせたの。・・・で、その子と一緒にいた男の子がユーリ君のイヤリングに興味を持ってて、見せてほしいって言ってきたの。つけられたとしたら、その時しか・・・。」

スニケット「ガキ!?」

キリカ「うん・・・小学校高学年ぐらいだったかな?」

スニケット「マジか・・・。いや、知り合いを名乗る女がやらせた可能性もあるか。」

ユーリ「!?・・・。あの、僕、何かいけないことを・・・。」

スニケット「・・・・・・。ハルキには俺から報告する。今日の外出は控えてくれ。」

キリカ「う、うん!もちろん!」

スニケットはユーリ君に説明するのが煩わしかったのか、無視して部屋を出た。私は落ち込んでいるユーリ君を慰めるように、背中に手を当てた。

ユーリ「!?・・・。やっぱり、僕、何かしてしまったんですね・・・。」

キリカ「・・・・・・。誰でも、気づけなかったと思うから・・・。」

ユーリ「!!・・・本当のことを言ってください!僕、何をしてしまったんですか!?」

キリカ「!!?・・・。」

私は、彼の手を握り、分かりやすく盗聴されていたことを説明した。

ユーリ「バルは、そんなことまでできるんですね・・・。迂闊でした・・・。」

キリカ「うん・・・私も・・・。まさかあんな小さな子が盗聴器を仕掛けてくるなんて・・・。」

小さい子じゃなくても、気づかなかっただろう・・・。まさか自分たちに盗聴器をしかけようとする人間がいるなんて、夢にも思ってなかったのだから・・・。

ユーリ「僕たちが異世界から来た人間だと分かっての盗聴・・・なんでしょうか?一体、何が目的で・・・。」

キリカ「うーん・・・。」

神永さんはどう見ても、私と同い年ぐらいの女の子だ。不自然そうな素振りはなかったし、演技しているようには思えなかった。・・・となると、あの男の子の単独行動?どちらにしても、盗聴の意図は分からない・・・。

ユーリ「もしかすると・・・。」

キリカ「ん?」

ユーリ「あの子、キリカに気がったのかも!!」

キリカ「ええっ!?」

絶対ないでしょ!

ユーリ「メルさんと恋人と見せかけて・・・実は密かにキリカに好意を寄せていた。でも、キリカには僕という夫がいる!なんとかして別れさせたいと思ったあの子は、僕に盗聴器を仕掛け、別れさせるための材料を探して・・・!!」

キリカ「あり得ないから!!」

ユーリ君の想像力・・・いや、被害妄想力には恐れ入る。異性を見つけると、すぐ恋敵に結び付けるんだから・・・。でも、まあ・・・そうやって言ってもらえると好かれてるんだと思えて、嬉しい気持ちもあるんだけど・・・。

キリカ「もう・・・真面目に考えてよね!」

ユーリ「考えてるよ!・・・・・・。あっ!そうだ!僕のイヤリングにつけられていた盗聴器は今どこ!?」

キリカ「スニケットが持ってちゃったよ。・・・で、どうするつもり?」

ユーリ「もう一回、イヤリングにつけるんだよ!」

キリカ「ええっ!?」

ユーリ「それで、キリカがいかに僕を好きかを話すんだ。そしたら、あの子もキリカをあきらめるしかないよ!!」

キリカ「・・・・・・・・・。」

呆れて開いた口が塞がらない。ユーリ君にとって『盗聴犯の片想い説』は冗談ではないのだ。

 

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