翌朝、私とユーリ君はこっそり占術の間へ行き、ワタリさんの指示に従い、バルへ転送された。その後、銀河研究センターからスニケットの車でいつも使っているホテルへ向かった。ユーリ君はまるで新作のアクセサリーを見るかのように、街のイルミネーションに心を躍らせていた。
ユーリ「すごい数の電飾ですね!ルカでは考えられません!!」
キリカ「そうだね。」
私は、光の小精霊たちで灯される優しい感じの光の方が好きだけどなあ・・・。そう思ってしまうのも見慣れているせいもあるかもしれない。
スニケット「年末で混雑してるところも多いから、はしゃいで目立った行動とるんじゃねーぞ!」
ユーリ「大丈夫ですよ!バルへ来るのはこれで4回目・・・任せてください!」
スニケット「ほら、もう調子に乗ってやがる!ちゃんと見張ってろよ、オ・ク・サ・マ!」
キリカ「!?・・・うるさい!わ、分かってるよ!」
奥様とからかわれ、苛立って返した。確かにスニケットの言う通り、ユーリ君の行動は目立つ。くれぐれもワタリさんや銀河研究センターの人たちに迷惑がかからないようにしないと・・・。
信号待ちしていると、街の電光掲示板にニュースが流れていた。『ネバーランドのユーザー数が国内人口の半数を上回る。加速する切り替え自殺に政府は罰則を検討。』と出ている。
キリカ「ネバーランド?」
スニケット「ああ・・・生命保険会社が運営してる脳ゲーな。脳をデジタル化して、死後も生きられるっていう・・・。」
ユーリ「!!?・・・。死後も・・・生きられる・・・?霊魂の状態でも、記憶を保持してさまよえる・・・ということでしょうか?」
スニケット「デジタル・・・いや、お前に言っても通じないか。要するにだ!身体はいつか朽ちちまうだろ?だから、新しい身体に記憶を移して生き続けましょうってことだ。」
ユーリ「!!?・・・新しい身体って・・・どこから用意するんですか!?」
スニケット「例えだ、例え!!面倒くせなあ・・・デジタルをどう説明すりゃいんだよ!」
ユーリ「でじたる・・・。」
キリカ「加速する切り替え自殺って何?昔、子供が脳ゲーをやって現実とゲームの区別がつかなくて・・・みたいな?」
スニケット「違う。このネバーランドっていう脳ゲーは、ゲーム中はAIが現実(リアル)を代行するんだよ。でも、現実(リアル)をAIに乗っ取られる危険性があることから、政府はゲームに切り替えられるのは死後のみと発表した。それによって、AIに乗っ取られる心配はなくなったけど、ゲームをやりたくて自殺する奴らが後を絶たないってわけさ。」
死んだらゲームの世界へ行けるなんて、死にたいと思っている人には甘い誘い文句でしかないもんね・・・。バルはどんどん現実とゲームの境界線がなくなっていってる気がする・・・。
ユーリ「あの・・・『えーあい』は霊獣みたいなものなんでしょうか?」
スニケット「・・・・・・・。俺は知らんぞ。」
面倒くさいことが嫌いなスニケットは、ユーリ君の疑問から逃げ出した。私もどう説明していいか分からいのだが・・・。
キリカ「少し似てるかもね。自分以外に身体を乗っ取られてる危険性がある・・・という点に関しては。」
ユーリ「!!・・・。『えーあい』も恐ろしい存在なんですね・・・。」
キリカ「うん・・・。」
これからバルはどうなっていってしまうのだろう・・・。